かつての岩手の象徴、南部曲がり家。
今なら何になるのか…
向かう先は冷房も要らない家。


(有)岩手ハウスサービス代表 安藤敏樹

「つくってきた家が100年後に解体されて、こんないい性能だったんだ、と言われる家をつくりたい」

たとえば築100年以上の家を解体する時に出会う昔の木材や技術。現代の技術者たちはその知恵や技に敬服する。これまでそんな場面を多く見てきた。
安藤さんが独立したのは1986年。有限会社岩手ハウスサービスが誕生して20年以上。『エコハウスコンテストいわて』の連続受賞、『いわてエコハウスビルダー』の認定を受けるなど安藤さんの家づくりはしっかりと地域に根付いている。
「独立当時、岩手では断熱と気密をきちんと考えた家の考え方はまだなかったと思います」
独立前は建築ではなく、土地の売買をしていた。建築へのきっかけは売った土地に1棟、2棟と建っていく家を見て『住めれば良い』という家はどうなんだろうか…そんな思いからだった。
「個人的には早くから高断熱、高気密住宅の認識はあったんです。これからは断熱、気密がきちんとした家が大事になると、北海道の勉強会などに積極的に参加して学びました」
岩手の気候風土に合い、永く暮らし続けられる家をテーマに辿り着いた家づくりは全館暖房の家だった。今でこそ一般的になった高断熱、高気密の家を安藤さんは15年以上も前から始め、100棟を超える寒くない家をつくってきた。しかも気密測定や断熱性能を表わす熱損失係数(Q値)など数値の公開も早くから行ってきた。

性能の良い家をつくるには人任せではなく、自分のところで…岩手ハウスサービスには20代〜50代と幅広い年齢層の大工職人がいる。熟練の知恵と技術を若手が学び、若手のパワーをベテランがもらう。
「断熱、気密の技術は他には負けない、と自負しています。この家づくりの技術を着実に次の世代へ伝えていくことで、性能の良い家がつくり続けられるんです」
創業以来、営業という部署も人もいない。一貫して性能にこだわり続ける。そのもとはどこにあるのだろう。

「今思い返すと、子供の頃に読んだ『ちいさいおうち』という絵本が記憶のどこかに残っていたのかもしれないですね」
『むかしむかし、静かな田舎にちいさいおうちがたっていました。それは、ちいさいけれどとても頑丈につくられた、強いおうちでした…』バージニア・リー・バートンの作品だろうか。意志を貫いた一人の女性の一生の物語のような書と言われる辺りは安藤さんの家づくりのこだわりに似ている。

「かつて岩手といえば南部曲がり家と言われた。今なら何になるのか…冬の寒さ、夏の暑さや風向きなどの気候風土は地域によって違います。ここでしかできない知恵と技術で地元にあった住み心地のよい家づくりを提案し続けていくつもりです」
住宅産業は地場産業であるべきと言い切る安藤さん。向かう先は無暖房住宅。
「これまで冬のことばかり考えてきましたけど、これからは夏の冷房を考えたいですね。高断熱、高気密で暖房のない家は出来ても温暖化と言われる今、冷房のない家は出来るのか…」
重く、心に届く言葉。安藤さんの未来予想図にはどんな青写真があるのだろうか。すべては『岩手で性能の良い家をつくり続けたい』この一点につながる思いに他ならない。

「家を建てる時ってその家族にとって一番いい時。幸せな時を営みたい、という夢を壊さないためにはこれからどうしたいのかなど話を聞きます。生活が見えないと間取りが出来ないんです」                                                                                                                          (住まいの情報誌 まがり家2008年秋号)



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