住環境の改善でアレルギーは治る?




「これからは”正直な住宅”を」
と語る植田優さん。
植 田 優
植田優建築工房(盛岡市)
一級建築士


VS

安藤敏樹
(有)岩手ハウスサービス
代表取締役


「断熱・気密・全室暖房・計画換気は基本中の基本」
と語る安藤敏樹さん。

 アレルギーとは、アレルギーを引き起こす原因となる物質(アレルゲン)に対して、それを排除しようと体が過剰に反応することをいいます。食生活に原因のあるもの、心因性のもの、住環境に起因するもの、そして、それらが複雑に関係し含つて発生するものなど多様ですが、住環境の改善で、アレルギー症状も故善されたというケースも、少なくありません。住環境とアレルギー発生との関わりは、アレルギーの原困をつくるような住環境の改善方法は、新築するときの注意点は…など、住まいとアレルギーの問題について、一級建築士の植田さんと、岩手住環境技術研究会の安藤さんにお話しいただきました。



住まいにもアレルギーの原因があることを認識してほしい
安藤●ここ数年、新築を依頼されるとき、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギーについて、相談されるケースが増えてきました。室内のほこりが原因でアレルギー症状を引き起こす人も多いようで、最初から「ほこりが舞わないよう暖房機は温風の出ないものにしてほしい」と訴える方も少なくありません。
植田●私のもとにも、少し前に、ある鉄筋コンクリート造りの集合住宅に暮らす夫婦が相談にみえました。室内の結露とカビがひどいそうです。カビはダニの大好物ですから、きっとダニもいるでしよう。それが原因なのか子供はぜんそく気味で、アトピー性皮膚炎にもかかっている。本人たちも、ぜんそくの気があるようだといっていました。それなのに、共働きのため、仕方なく日中はずつと窓を閉めきっている状態。台所の換気扇を一日中回しても、症状はまったく改善しない。早く引っ越したいが、こんな家をほかの人に売っていくのもうしろめたい…と深刻でした。
安藤●室内のカビ・ダニやほこりがアレルギ−の原因と考えられる場合には、カビ・ダニの温床となる、結露をなくすことが前提だと思います。それに、輻射熱で室内を暖めるパネルヒータや蓄熱暖房機など、ほこりを巻き上げないような暖房機を選ぶことも大切。そして、室内に汚染物質をためないように、計画的に換気をすること。これでかなり改善できるのではと思います。
植田●幸い、いままでお世話になった施主で入居後にアレルギーに悩んでいるという話は聞いていません。
安藤●私たち研究会のメンバーからも、そういった話は聞きませんね。私たちは「断熱・気密・全室暖房・計画換気」の四条件が揃った家が基本だと考えています。断熱、気密がきちっとなされている家で、全室暖房にすると、室内の温度差が少ないから結露も出にくい。結露がなければカビやダニも発生しにくい。そして、計画的に換気をしていれば、室内はいつも新鮮な空気で満たされる。つまり、四条件が揃った家づくりは、住環境によるアレルギー疾患の原因を、できるだけ少なくすることにもつながっているのだと思います。
事実、ぜんそく気味だった子供が、まったく発作がおきなくなったなど、入居後はアレルギー症状が軽くなったという方が、少なくありません。
植田●私も、入居後に、子供のアトピーの症状が改善してきたと、喜ばれたことがあります。住環境をよくすれば完治するというわけではないでしょうが、住まいにも、少なからずアレルギー症状を改善する要因があることは確かではないでしょうか。


誠実な材料、誠実な施工… 「正直な家」づくりが求められている
安藤
●アレルギーの原因は人それぞれだから一概にはいえませんが、最低限、新築するときに気をつけたいポイントを、いくつか考えてみたいと思います。
植田●やはり、室内の温度差が少なく、空気がよどまない家を造ることが、基本ではないでしょうか。それは、さきほどの断熱・気密・全室暖房・計画換気の四条件が満たされた家の状態とも重なります。まずは、性能が一定レベルに達している家であること。それはアレルギーだけでなく、病気になりにくい家でもあると思います。
安藤●断熱・気密・全室暖房・計画換気が揃った家は金額も高いのではと、心配する人もいますが、内装や見た目の豪華さにこだわらなければ、案外やりくりできるケースが多いものです。設計プランによっては、狭い坪数でも、広く便える家にすることができるのですから。
植田●その辺の工夫は、設計者の腕の見せどころでもあります。
安藤●アレルギーの話に戻りますと、例えば建材や仕上げ材など、家をつくる素材の一部に、アレルギー反応を示す人もいると聞きます。私たち業者は、施主に対して、あなたの家に使おうと思っている建材は、こういう材質で作られているものですと、きちんと説明できるようでなければいけませんね。
植田●安藤さんがおっしゃるような意味も含めて、私はこれからの住宅は「正直な住宅」を目指すべきだと考えています。「正直な住宅」とは、お茶の水女子大学の田辺新一助教授がいわれた言葉で、簡単にいうと、身元のはっきりしたもので造られた住宅ということです。どんな材料で作られて、どういう役目をするもので、家に、体に、どんな影響があるか。それらを設計者、施工者がきちんと認識し、施主に正直に説明する。家の性能もしかり。きちんとデータをとって、施主に報告するといったことが大切だと思うのです。逆に、施主の方から、説明や報告を求めたりしてもいいと思います。その対応が、誠実な業者かどうかを知るめやすになるかもしれません。
安藤●きちんと説明するためには、こちらも勉強しなくてはなりませんしね。
植田●そうです。医学、生理学、住居学、家族学、心理学…。これらはすべて住まいと密接に間係しているのに、私たち建築関係者には、いままでそういった分野からのアプローチが欠けていたような気がします。これからは、もっと異分野との協力が必要ではないでしようか。安藤さんや私も参加している岩手ネットワークシステム(INS〉も、産学官の情報・技術の共有化をはかる目的で設立されたものです。こういうネットワークがもっと増えたらと思います。
安藤●同感です。例えば、アトピー性皮膚炎の症状などは、食生活や住環境だけでなく心埋的な面も大きく関わっているとか。私たち技術者は、そのあたりの知識が未熟です。これからはさまざまな専門分野の人と協力し合い、アレルギーの改善に、また人の健康を守るために、建築がどう関わっていけるかを考えていけたらと思います。

( いわての住まい 1998年春2号掲載 )



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