子どもからお年寄りまで、
快適に住まう「終の棲家」。


(有)岩手ハウスサービス 安藤敏樹

加齢対応だけで住宅を考えない
 21世紀に入り、日本は本格的な超高齢化社会に突入します。2020年には、4人に1人が65歳以上になり、同時期、3世帯に1つは独居世帯になるという統計もあります。

 これだけ平均寿命が伸びると、ライフステージとなる住宅にも、これまでとは全く異なった機能や視点が求められます。住宅は家族はもちろん、個人としてもその生き方を最も反映するものであり、誰とどんな暮らしをしたいか、独居後も視野に入れると、その形態のあり方もさまざまです。

玄関を入ってすぐに設けた吹き抜けと階段。動線に回避性をもたせ、生活スタイルの変化に応じて、吹き抜けを居室にもできる可変性。
 
バリアフリー住宅、高齢者向け住宅、介護住宅…など、すでに老後を意識した住宅の模索が始まっています。が、私は個人的に「老いを意識した住宅」という考え方には疑問を持っています。なぜなら、人生80年時代の住宅は、高齢者だけが使いよい住宅ではなく、そこで生まれた子供が80年間にわたって過ごす住宅であることも考えられます。その間快適であり続け、健康に害を与えず、家族も個人も支える存在でなければならないからです。
 
人生80年時代の住宅に求められることには、いくつか共通した基本があります。まず第一に、人と同様に住宅の寿命もまた長生きできなければ意味がありません。第二に、加齢対応を意識しすぎて特別仕様になってしまうことを避け、どの世代にも安心でき、住み続けることのできる仕様であり、いつでも生活の変化に対応できる可変性を備えていることも大切です。第三には、自分らしい生き方のできる機能をどれだけ備えているか、といった視点も大切でしょう。


可変性と不可変性 回避性に配慮する

階段下は収納と電気温水器の設置場所に。階下でも、居室と居室の移動に遊びをもたせました。
 生活スタイルの変化に応じて、大規模なリフォームをするケースも増えています。新築時の加齢対応仕様は、基本的に全ての世代に快適な仕様にもなり得ますが(ユニバーサルデザイン)、新築時のプランの完成度がいくら高くても、限度はあります。必要に応じてリフォームをすることもいいのですが、リフォーム時には、躯体や水回りなど不可変部分があり、その部分の改修は思いのほか難しく、費用的な負担も少なくないのです。
 
壁の少ない、がらんどうに近い可変性の空間は、万一、リフォームが必要になったときにも威力を発揮します。仕切壁を設け、個室をつくるのはできるだけ最後に回し、部屋の間仕切りは、ふすまや障子、パーティションを考える。こうして全体をワンルームに近い発想で考えると、空間に広がりができ、家族の気配もより身近に感じます。子供には、住宅全体が絶好の遊びの空間となり、介護を必要とする家族ができたとしても、閉塞感がなく、介護者が全体の様子が見通せ、安心感があることなど、さまざまな利点が生まれてきます。どうしても必要なときには、そのとき初めて、壁を考え、設ければ済む話です。


仕切りをなくしたキッチンとリビングは階段を中心につながるテザイン。家族の気配がどこでも感じることができます。
 間仕切りがなく、空間を広くとることと同時に、空間に「回避性」をもたせると、日々の暮らしのなかに楽しさが生まれます。キッチンや浴室、トイレ、あるいはほかの部屋に移動する際、毎回同じところを通るのではなく、いろんな道順をつくるのです。一般に、人は行き止まりで180度回転して戻ってくることを嫌う性質があり、身体が不自由になると、その性質はもっと顕著になります。

 どこに行くにも、ぐるり回って移動できる。行きはこの道順、帰りはこの道順といった回避性をもたせた動線を考えることは、楽しさが増すだけではなく、それ自体が立派なユニバーサルデザインにもなり得るわけです。

 こうして考えていくと、「終の棲家」とは、老後を過ごすためだけの住宅ではなく、むしろ、全ての世代が、いつの時代も、何歳のときにでも快適に住みこなすことのできる楽しい住宅、ということができるようにも思えるのです。
( 家と人。 2003年秋7号掲載 )



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